東日本大震災からもうすぐ10年。
当時、絵本作家のうささんが呼び掛け、震災で失った動物の思い出を絵画にしてくださり、全国で展示会を開催されていました。
うささんは、現在も災害時ペットの捜索や避難セミナー等、活躍されています。
昨年、展示会の抜粋とエピソード、災害時の避難について書籍化されました。
出版された本には収録されていませんが、私達が浪江で保護したモカちゃんを有志の作家さんに描いていただき、展示会にも出展していただきました。
うさ著『災害で消えた小さな命』
モカちゃんの原画です。
現在も我が家の壁に飾っています。
以下、展示会で掲載されたエピソード文です。
モカちゃん
(モカちゃんは、福島20キロ圏内に残されていた猫です。)
7月下旬の真夏の熱波の中、浪江町の高台でモカに出会いました。
用水路の水は止められ渇ききっており、牛は住宅地をさまよい、
人の行く先々にはカラスが見張り、置いたフードにはハエやアブが集まって黒く埋め尽くしていきます。
私達がそこを通りかかったとき、モカは縁側でこちらの様子を伺っているようでした。
ガリガリの状態で、 首輪は襷がけになり、それに沿って毛は剥げて、
そこから見える皮膚は赤くかぶれていました。
なんとか保護しようとしましたが、近寄ると縁の下に隠れて、離れると出てくる、それの繰り返し。
捕獲道具もなかったため、諦めて水でふやかしたフードを置いて去るつもりでした。
車を出してすぐ、「縁側にカッター忘れた」と気付き戻った時、
モカはご飯を目を潤ませながら一生懸命に食べていました。
もう人が近づいても皿から離れようとはしませんでした。きっと極限状態だったのでしょう。
小物を入れていた折り畳みのプラスチックBOXをゲージがわりにして、
もう少しだから、頑張って、と声をかけながら動物病院に向かいました。
病院までたどり着きいた時は「もう大丈夫、助かった」そんな思いで一杯でした。
まさか、こんな結末を迎えるなど想像もしていませんでした。
本当はもうご飯など食べられない体だったのかも知れません。
病院に運び込まれた日から嘔吐と下痢が続き、獣医さんには懸命な治療を施していただきました。
しかし、その10日後、モカは家族に再会することは叶わず、虹の橋を渡っていきました。
保護したお宅に貼っておいた貼り紙には、後日、「うちは猫は飼っていませんでした。」と
メモ書きされていました。
いまだ飼い主さんは見つかっていません。
かわいらしい首輪と鈴がついていました。
入院時に、病院で撮影していただいたモカの写真です。
画のモデルとなりました。
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