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浪江の子「ちび」 その1

福島県浪江町で生まれたちび。

2011年に東日本大震災が起こらなければ、ちびはこのまま浪江で最期を迎えることができたでしょう。震災は人間だけでなく、動物たちの生涯にも大きな影響を与えました。

 

3月11日、ちびは福島県浪江町に取り残され、自分の住処を失い、家族と離れ離れになりました。

多くの人命が亡くなった未曽有の災害、動物たちの救出は後回しになりました。その間、多くの動物が飢餓し、野生動物に襲われ、非常にたくさんの命が失われました。

有志のボランティアや福島県の役所の方々は、残された動物を救出する為に警戒区域内を捜索しました。私達もその中の一員となり、幾度となく福島の浪江へ向かいました。

 

震災からおよそ1年後、救出するために仕掛けた捕獲器に入ってくれたちび。

あの土地で、1年もの間どうやって生き抜いてきたのだろう。

野生動物に怯えながら、線量の高い土地で様々な物を捕食して生きのびてきたちび。変形した片耳や猫エイズにも罹っていたことからも、生き延びるには過酷であったと想像できます。

保護した当時のちびは、去勢されておらず警戒心が強く攻撃的であった為、もしかしたら野良猫かもしれないと思われました。

今考えてみると、一年もの間、無人の浪江に取り残されて生き抜いた経験が、ちびをそう変えてしまっていたのです。

 

福島のシェルターにいた頃のちび。

他のオス猫とよくケンカしていました。

 

 

飼い主捜索を始めて半年しても飼い主が見つからず、やむなく里親募集に切り替えた矢先、浪江町役場に貼り出していた飼い主捜索ポスターのちびの写真を見て「間違いない」と飼い主さんが連絡をくれました。

そして、ちびは1年半ぶりに飼い主さんと再会しました。1年半もの間、ちびの安否を気にかけて探し続けてくださった飼い主さんに只々感謝しました。

 

しかし、ちびの話はそれで終わりませんでした。

飼い主さんは浪江を離れ、二本松のアパートで暮らしていました。そこはペット不可の為、ちびは我が家で預かることにしました。

また、飼い主さん一家もこれから先のことを考えなければならない大事な時期。

悩んだ末に浪江に戻ることはせず、別の地に家を建てることを決断され、それまでの4年間は我が家でちびは暮らすことになりました。

4年という歳月は、ちびが浪江で暮らした日々よりも長く、我が家の環境に慣れていくちびを見て、飼い主さんへ我が家へ譲渡して頂けないかお願いしました。

そして、ちびは正式に我が家の家族となったのです。

 

すっかり我が家に慣れたちび。

スリムなちびでしたが、幸せな日々は太りますね(^-^;